2018.4.10
新見市哲多町の山間で育つ鶏卵「吉備の平飼いたまご」。(有)新見ポートリーファームが欧州のシステムを導入して改良を重ねた高所式鶏舎で、衛生管理を徹底して生産しています。社長の加地哲さん(43)と専務の久一さん(45)兄弟が切り盛りし、「どこにも負けない品質で付加価値を高め、販路を広げたい」とJA阿新アンテナ店などで販売します。
加地さん兄弟は31年前に一家で神戸市から移住。鶏卵業を軌道に乗せた父親の久夫さんを不慮の事故で亡くしたことで、約3万羽の経営を受け継ぎました。18年間かけて15万羽まで規模拡大させ、2年前には鶏が鶏舎内を自由に動き回れる平飼いに4万羽を転換しました。ゲージ飼いに比べて大量生産に向かず、人件費や設備投資、餌にかかる費用などが割高になるものの、「一羽一羽と向き合うことで健康で安全安心な鶏卵を作りたい」とこだわりを見せます。
緑に囲まれた鶏舎は、高梁川源流の標高550mの静かな山間にあります。哲さんは「夏涼しく、鶏舎には自然の風や光が注ぎ、水や空気も新鮮だから鶏がストレスなく元気に育つ」と環境の良さをアピールします。
特に気を配るのが衛生管理です。鶏の足元を高床の網目状にして、排泄物が鶏や卵に付かないよう工夫しました。鶏糞は3mくらい下のオガクズを敷いた地面に落ちる仕組み。毎日、一羽一羽触って健康状態を確認し、出荷するのは専用の巣箱で産んだ卵だけという徹底ぶりです。
加地さん兄弟が鶏舎に入ると、鶏が近寄ってくるほどよく懐いています。産まれたばかりの卵の温もりにふれ、一つ一つの命を感じるのが喜びといいます。二人は「父が残してくれたいろいろなものをなくさないよう、鶏に愛情を注いでいる。新見の環境を生かし、もっときれいな農場にしたい」と夢を描きます。